ファンファーレと熱狂

これでも喋り足りない

初恋とは、

授業が退屈だ。

 

自分で選んだ学校で、自分が好きなはずの教科なのだが、どうにも集中出来ない。

 

それは今日のこの授業だけではなく、ここ数日間ずっとそうだ。

 

原因はハッキリしている。

 

僕は授業中に本を読んでいるからだ。いや、本を読んでいたからだ。

 

だから、授業は退屈ではあるけど、授業中は退屈ではない。授業が退屈であるのが前提のように話したが、ただ自分で選んで聞いていないだけだ。

 

そして昨日それを読み終わった。いつの間にか僕はその物語が大好きになっていたようで、喪失感から本当にただ授業に集中出来なくなっていた。

 

「君の膵臓をたべたい」

 

カニバリズムにでも目覚めたの?」

 

「いや、浜辺美波に目を奪われた」

 

浜辺美波が好きだった。めちゃくちゃ。

 

きっかけは「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の実写特別ドラマをテレビで見たからで、ヒロイン役を演じていた彼女は容易に僕の目と心を奪ってしまった。奪う気は無かっただろうし、奪われる気も無かった。何より彼女は僕という存在がこの世に存在しているかどうかも知らない。無意識の罪である。だから奪って「しまった」だ。

 

同級生だし、浜辺美波、可愛いよね。

 

そんな浜辺美波がヒロイン役で「君の膵臓をたべたい」の映画に出ることになった。

 

中学生になってから部活に熱中したり、スマホYouTubeばかり見るようになってから小説をあまり読まなくなった僕でも原作のタイトルは聞き覚えがあったから、なんの迷いもなく映画を見ることにした。

 

すげー面白かった。

 

こういう時は馬鹿みたいに書いた方が伝わりそうな気がするから馬鹿みたいな書き方するけど、すげーおもしれぇの。

 

そうなるとやはり原作が見たくなる。

 

そして見る。

 

とここまでが今回のブログの732文字にも及ぶ前置きである。

 

この物語には「恋」と「想いを伝える」という2つがキーワードとして出てくるところがある。

 

考えてみた。

 

僕は誰かに恋をして、想いを伝えたことがあっただろうか。

 

初恋とは。

 

それは幼稚園の時に勝手な婚約を結んだあの子だろうか、それとも小学1年生の時にクラスのマドンナ的存在だったあの子だろうか。

 

いや、好きだったかもしれないが恋と呼んで良いのか。

 

もしも初恋の定義に自主権があるなら、是非とも美化したいので小学6年生の時に好きになったあの子ということにしてもいいだろうか。実際本当にそう思っているし。

 

僕は今でもたまに思い出す時がある。

 

来年のバレンタインもお互いに恋人がいなかったらチョコを僕にくれると言っていたあの子を。

 

1年後、条件は満たしていたはずなのに何も渡してはくれなかったあの子を。

 

僕達2人は時代の最先端をかけっこしていた。

 

小学6年生の時に知り合い、初めて会話を交わした。ネットで。

 

とは言ってもクラスメートではあるし、なんならもっと前からお互いの名前を知っていた。

 

当時学校の一部の生徒に流行っていた「アメーバピグ」というものにどハマりしていた僕は、その日もいつも通りに似ても似つかない様な金髪のアカウントを操り、ピグ友と呼ばれるネット上の友達と遊んでいた。

 

暇になったのでクラスメートの女の子の元へ向かうことにした。アメーバピグではピグ友になっているアカウントと同じエリアに行ける機能があり、その機能を使用するとクラスメートの女の子はこれから僕が初恋をすることになるあの子と一緒にいた。

 

どうやら僕の話をしていたらしく、「エスパーだw」なんて言われたのを今でも覚えている。言われたというか、打たれたというか、出てきたというか。

 

今思えばこの時点で相手は僕のことをもう気になっていたのかもしれない。

 

それがきっかけであの子と知り合い、すぐに仲良くなっていった僕はそれから毎日個別トークで約3時間は会話を交わした。

 

そんなん簡単に好きになるわ。

 

実際めちゃくちゃ可愛いし。

 

その子はあまり男の子と話すのが得意ではないみたいで、そんな子が僕とは毎日、ネット上とはいえ会話してくれるのが嬉しくて愛おしくて堪らなかった。僕の中でそうであったように彼女の中で僕が特別な存在であった様な気がした。

 

彼女と会うために、誰よりも早く学校に行った。

 

吹奏楽をやっていた彼女は朝練があって、早く学校に来ていた。

 

彼女を見る。目が合う。逸らす。また見る。また目が合う。

 

そんなやり取りが楽しくて仕方無かった小学6年生。

 

個別トークで「明日こそ学校で話そう」なんて連絡し合って、また朝早く行って、「なんでこんな朝早く来てるの?」なんて聞いてくる彼女に「いやお前に会いたいからだろ!!!」と全力で心の中でツッコミ「暇だからかな~」なんて強がった小学6年生。

 

事件は予告無しに起こる。

 

お互いに気づいているはずだった。そして何かが壊れるくらいなら気付いているままで良かったはずだった。

 

「好きな人いるの?」

 

なんて馬鹿みたいな質問が彼女から来た。

 

「いるよ?そっちは?」

 

ドキドキしながら返した。

 

それからお互いに、お互いに辿り着くようなヒントを出し合い。

 

ついに「〇〇が好きだよ」と伝えてしまったわけだ。

 

そしたら彼女も僕が好きだと言い出した。いや知ってた。知ってたけど事実確認が取れてしまうとこんなに嬉しいとは。

 

「赤面なう」

 

彼女のこのセリフを何度も何度も味が無くなるまで反芻した。

 

しかし事件は予告無しに起こる。と書きました。

 

たまたま元から約束していたので、次の日僕らはほか何人かと遊んだ。

 

目も合わせられなかった。

 

その日の夜いつものように彼女と個別トークしていると彼女は少しいつもと違った。

 

「ごめん、やっぱり友達のままが良い」

 

なるほどね。いや、わからんけど。

 

なんだこの落差。

 

松岡修造が3人生まれて、次の日7人死んだ時の気温くらい落差あるって。

 

でもまぁ、これ以降僕はずっと彼女を思い続けることになるんですけどね。

 

めちゃくちゃ好きだったなぁ。もしかしたら今でも好きかもしれないくらいに。

 

でも彼女を好きになれたことと一瞬でも恋ができた事が今の僕の最低な恋愛観を作り出してくれたと思ってるし、感謝してる。最低だよ君。

 

ちなみにこの話は恋に落ちなかった話でもあるけど普通にオチがない話でもあるからこの辺で今日のブログは唐突に終わるぜ。

 

初恋とは、